きよらかなる、きよらかなる情感を盡して
僕は尖れる帆立貝のやうに
眞晝の扇をうちひらく
大氣よ、色を點ぜよ
あまりにかがやき、あまりに雪白すぎる。
[#地から1字上げ](峨峨温泉にて)
虹の懸れる幽愁
限りなく、かぎりなく
この眺望を透す爽かな情感に身をふるはせる
うしろから吹き下す西風も眉にしみ
青燦としてうすむ青朝山の角より
夕霽《ゆふばれ》の虹くつきりと吹きあげ
うねうねと白みゆく激流も遠くほのかに
全體は流麗な青い金色の靄とかはり
僕も馬もキラキラと雨の雫を滴らして
今放電的な虹にすき透つて山を下る
限りなく、かぎりなく
この幽幻なる清きわびしさに
耐へられず、たへられず。
午前中の精神
雪のある、うすあかい原林を
踏みしだき、かきわけ、つき進む僕への
皚皚たる高山の片照りの光線
喜び、喜び、發散する清らかな瀧の花火
雲はめぐり、風は熱い思想を洗ふ
はつらつたる空間の川、幽雅な七千呎の電氣風
僕は朝紅のある、水のひびきのする鳥への感覺をもつて
正午を組みあはす嶽へのぼらうとする
こんなにも僕を涼しく、氣も輕く
高氣壓とともに高みへ導く
おお青青たる午前中の精
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