ゐてどことなくむなしい熱氣が
ぽつぽと空中にもえるとも感じらるる
田舍娘よ、ここへ來て寢ころぶといい
うすい孔雀いろに曇つた午まへは
うつくしい怠惰な色もわるくはない
眉をさつぱり落したやうな
この晝顏の淡々たる砂原では。
幽棲
風致に乏しい畑のほとりの
さらさらなびける眞夏の柳は
晴れ曇り、色もあかるくこつくりと垂れてゐる
その中に午後の雀はかくれ、鳴きしきり
又はたはたととびさりて、風の音さやかに聞え
ひようひようと海近き空氣の鳴るばかり
雀よ、色も乏しく、もの寂びて
この七月の滿月近き晝すぎの白い月に
ちしやちしやと何を騷いでゐる
ゆるる柳の枝と葉の中には
われわれの目につかぬ無爲の幽居が
ちらちらと日光を通して空中にながれてゐるぞ。
信仰への感覺
さらりとしたる新樹の枝枝に
うすももいろの五時の日が色づく
くたびれて、さてあらゆる興味も去り
昆蟲も滿足し、われわれも妙に淋しい時ではないか
少年よ、麥酒を買ひに走つておいで
こんなにも華やかにして寂寞たる
無人の林のつらなり、舂く日の照りかへし
私は空氣の色にやけ、日に乾いて
もう村を歩き廻る氣も起らぬ
かういふ時
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