星座
それなら若い野あざみの發生状態を
空中の双眼鏡で垂直に見下ろさなければならない
葉が互生し、羽形に分裂し
刺状の鋸齒が四面にきれて
いきいきした眞青な紋章の星座が
はつきりと地上に浮彫されてゐるのを見る爲めには。
[#地から1字上げ]――畫家Sの話――
蝶の出帆
蝶は出帆するよ
四月のすつきり高い枯草の突端から
毛蟲となつてよぢのぼり、よぢのぼり
その毛製の裝飾をぬぎすてて
陸界の波止場をけり
あたらしい氣體の世界へと
きれいな、綺麗な蝶と生れかはり
風に祝はれて出帆するよ。
忍冬花を啖ふ
みんなして、たつぷり黄金いろした蔓を
ぼさぼさと引きまはして脣をすりつけ
六月のあかるい眞晝の蜜を吸はうよ
たまらなくはれやかな匂ひが
藪から出てくるわれわれを夢みがちに色づけ
女なぞは子持の白鳥のやうに
まきついた忍冬の花飾りを
むしやむしや啖べる季節になつたね。
南かぜ
この曇り日に、いちめんの晝顏が
色のうすい風の盃をゆすり、ゆすり
あちこちと咲きまはつてゐるところ!
はるかに川邊のかたより、ゆるりかんと
帆は雲にふれて消えもせず、ふくらみもせず
陽氣な、それで
前へ
次へ
全36ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 惣之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング