る日※[#「日/咎」、第3水準1−85−32]りに
うすい午後の情愁を吹き醒まさう。
木の間深きを怨みて
私はここに坐り、ねむり又ひとり醒める
あまりに蒼艶なる爽かなけむりにつつまれて
光線のある愁ひの情を
青い響きのする石と水の闇にひそめ
まつ白な寺の壁にうつる六月の朝を
青銅色の姿にぬりこめつつ
うつうつたるこの頃の情念にむかつて
より夕暮のある、より感情ぶかい
きよらかな色洋燈を身に點さうか。
情炎
朝風よ、霧のある庭よ
あたらしい葉をむらがらせた樅の下に
今日もわたしは生木の椅子を置いて
あの木の間から孔雀色の衣裳を引いて
しづかにあらはれた昨日の夕暮の
あでやかなりし人影を待つてゐる
鮮かなヂキタリスの花の塔の影や
あたりにちつてゐるムスカリの白い午前の色に
ほのかにのりくる遠い朝景色を
もう一つの空しい椅子の上いつぱいに眺めて
木の間からあらはれる虹色の頬の人を
朝風が艶やかに照り出してくれるまで。
青梨
水よりしづかな、しづかな
葉がくれの、曇れる野の色に
つやつやした風のふるるところを愛せよ
その颯とした新らしい匂ひと
そのささやかな梨の實の
午
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