よ」
 と富士男はうしろの少年たちにいった、少年たちは先をあらそうて走ってきた。
「なんだろう」
「ひょうか」
 とウエップがいった。
「クーガル(ひょうの一種)かもしれない」
 とグロースがいった。
「いや二足動物、だちょうだ」
 とドノバンがいった。じっさいそれは、アメリカだちょうと、称《しょう》せらるるものであった。全身は灰色で、その肉は佳味《かみ》をもって賞《しょう》せらる。
「生けどりにしなくちゃ」
 とサービスがいった。
「うん、きみが一生けんめいに穴をかくしたかいがあったね」
 とドノバンが笑った。
「だが生けどりはむつかしいよ、あの大きなくちばしでつっつかれたらたまらない」
「なあにだいじょうぶだ」
 サービスは身をおどらして、穴のなかへとびこんだ、穴のなかでは猟犬《りょうけん》フハンと、だちょうが必死《ひっし》になって戦っていた。だちょうは穴がせまいために、つばさを開いて飛ぶことができなかったが、いま最後の力をこめて、フハンの眼玉をつこうとした。そのせつなにサービスはだちょうのながいくびにぶらりとさがった。だちょうは驚《おどろ》いてサービスの頭を、その怪奇《かいき》な
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