小さなボートは気軽《きがる》そうに頭をふりふりついてきた。
「バンザアイ!」
一同は声をあげてさけんだ。
「ぼくらのつくったいかだだ」
とドノバンがいった。
「そうだ、ぼくら少年はいかだをつくった、さらに少年の連盟団《れんめいだん》をつくるんだ」とゴルドンがいった。
「少年連盟バンザアイ」
いかだは川の右岸にそうてなめらかにすすんだ。だが潮にまかせて遡行《そこう》するいかだのことであるから、速力はいたってにぶかった。その日は中途《ちゅうと》で一|泊《ぱく》し、一同は富士男の桃太郎物語などをきいて愉快《ゆかい》にねむりについた。
翌日いかだが進行するにつれて、寒気がだんだんはげしくなった。もとより急ぐ旅でもなし、むりなことをして一同をつからすのは本意でないから、この日もまた一|泊《ぱく》した。その翌日の午後になると、はるかに笑うがごとき、湖《みずうみ》の青黛《せいたい》をみることができた。午後三時! 日本人山田の洞《ほら》ちかき川の右岸である。
善金《ゼンキン》、伊孫《イーソン》、ドール、コスターの幼年組は早くも岸にのぼって、とんだりはねたりうたったりした、いかだの上からその光
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