いたるまで、いやしくも男の子のある家では、屋根よりも高く鯉幟《こいのぼり》を立てる、室内には男性的な人形をかざる。鐘馗《しょうき》という悪魔降伏《あくまごうふく》の神力ある英雄の像をまつる、桃太郎という冒険者《ぼうけんしゃ》の像と、金太郎という動物と同棲《どうせい》していた自然児の裸像《らぞう》もまつる、この祀《まつ》りを五月の節句《せっく》と称するんだ、五月節句は男子の祝日なのだ、だからぼくは五月節句をもって、世界少年|連盟《れんめい》が共同の力でもっていかだをつくり、相和《あいわ》し相親《あいした》しんで人生のかどでにつくことを、じつに愉快《ゆかい》に思うのだ、諸君もどうかこの意義ある五月五日を忘れずにいてくれたまえ」
「賛成《さんせい》賛成」
一同はかっさいした。
「だが君、その鐘馗《しょうき》や桃太郎の話をもっとくわしく話してくれたまえ」
とゴルドンがいった。
「よしッ、話そう、だが潮がそろそろやってきたようだ、まず、とも綱《づな》をとこうじゃないか」
「よしきたッ」
バクスターはしずかにとも綱をといた。いかだは潮におされて動きはじめた。いかだのしりにひかれて、サクラ号の
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