のなかにはだれひとり不平をいうものはない。
だれよりもまっさきに働くのは富士男とゴルドンで、ふたりはいちばんむつかしい仕事を喜んでひきうけた、ふたりはサクラ号のキールをきって二つになしたるものや、前檣《ぜんしょう》後檣《こうしょう》の残部などのもっとも重いものを、エイエイかけ声をして運んだ。それに負けじとドノバンもグロースも帆桁《ほげた》を運んだ。バクスターはそれらのなかから、長い木材をえらんで川のなかにいれ、それをたてになし、短い木材を横に組んでたて十メートル、はば四メートルのいかだの骨をつくり、その上にサクラ号の甲板《かんぱん》や、他の板ぎれをくぎづけにして、りっぱないかだを完成した。
この工事がおわったのは五月二日である。翌三日からいよいよテントの貨物《かもつ》をいかだにつみはじめた。善金《ゼンキン》、伊孫《イーソン》、ドール、コスター、次郎の幼年組は軽いものを運び、重いものは年長組にまかせた。
協力一致《きょうりょくいっち》! 世界少年|連盟《れんめい》は、ほんのわずかの日数のあいだに、おとなの二倍以上の仕事を完成した。五月五日一同はいかだの上に集まった、ゴルドンは悵然《
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