てっこつ》があり、船板があり、柱がある。それらをとくのはなかなかよういなことでない。
 しかしさいわいなるかな、四月二十五日の夜、とつぜん大風吹きつのって、天地もためにくつがえるかと思われたが、夜が明けてから浜辺へいってみると、サクラ号はめちゃめちゃに破壊《はかい》されて、大小|数限《かずかぎ》りもない木片は、落花のごとく砂上にちっていた。一同はなんの労するところなくして、船をといたようなものだ。
 その日から一同は毎日毎日木片を拾いあつめては、エッサモッサ肩にになって天幕《テント》に運んだ。読者よ、いかに勇気あるものといえども、かれらの年長は十六が頭《かしら》で、年少は十歳である。かれらの困苦《こんく》はどんなであったかを想像《そうぞう》してくれたまえ。
 かれらはいずれも凛々《りんりん》たる勇気をもって、年長者は幼年者をいたわり、幼年者は年長者の命令に服し、たがいに心をあわせて日の暮るるも知らずに働いた。ある者は長い木材をてこにして重いものをおこすと、ある者は丸い木材をコロにして重いものをころがしてゆく、肩にかつぐもの、背にになうもの、走るもの、ころぶもの、うたうもの、笑うもの、そ
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