いってなだめるようにいった。ドノバンはしいて反対をしてみたものの、心のなかではそれよりほかに策《さく》がないことを知っていたので、沈黙《ちんもく》してしまった。
 衆議《しゅうぎ》一決のうえはいよいよ貨物運搬《かもつうんぱん》にとりかからざるをえない。富士男の推薦《すいせん》でいっさいの工事は仏国少年バクスターに一任し、一同はその指揮《しき》にしたがうことにした。バクスターはへいそあまりものをいわないが、勤勉《きんべん》にして思慮《しりょ》深く、生まれながらにして、建築《けんちく》の才能があった。富士男がかれを推薦《すいせん》して工事の部長としたのはむりでない。
 ものの順序《じゅんじょ》としてバクスターはまず川の右岸にテント小屋を建てることにした。川のほとりに繁茂《はんも》するぶなの木の枝と枝のあいだに、長い木材をわたして屋根の骨をつくり、それにテントを張り、そこに火器《かき》弾薬《だんやく》その他いっさいの食料を運んだ。そのつぎにはいよいよ船体の外皮《がいひ》をとかねばならぬ。船の外皮は銅板《どうばん》で、これは後日なにかの役にたつからていねいにはぎとった。しかしそのつぎには鉄骨《
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