とではないよ」
なにかにつけて他人の意見に反対したがるドノバンはいった。
「きみのように反対ばかりしては、仕事がはかどらないよ。人の意見に反対するなら、まずきみの意見をいってくれたまえ」
と富士男はいった。
「ぼくは洞穴にひっこんで冬ごしをするよりも、このまま船のなかにいるほうがいいと思う。船におればここを通る船に救われまいものでもない」
「それにはぼくは賛成《さんせい》ができない。このばあい、ほかから助けを待つべきでない。ぼくら自身の力で、ぼくらの生命をまもる決心をしなければならん」
「それでは永久に洞穴のなかにいて餓死《がし》するつもりか」
「餓死するつもりではない、ただぼくらはいかなるばあいにも、他人の助けをあてにせず、自分で働きたいと思うだけだ」
ドノバンと富士男はまたしても衝突《しょうとつ》した。
「ドノバン君、ぼくらのサクラ号はもう半分以上こわれかけてるんだ、船にとどまるといってもとどまれないのだ。だからぼくらは洞穴のなかで冬をこして、その間にここへ旗《はた》を立てておけば、通航《つうこう》の船が見つけて助けてくれるかもしれんじゃないか」
ゴルドンは両者のあいだには
前へ
次へ
全254ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング