暮れたが、船中でるすをしていたゴルドンは、たえず船の上からのろしをあげていたので、四人はそれを目あてにぶじサクラ号に帰ることができた。
 その翌日、一同は甲板《かんぱん》に集まって、遠征隊《えんせいたい》四人の報告をきき、いよいよ冬ごもりの準備にとりかかることにきめた。
 山田の地図によると、この島は東西十里(四十キロメートル)南北二十里(八十キロメートル)であるが、山田がこの島で一生をおわったところをもってみると、訪《と》う人もなき絶海《ぜっかい》の孤島《ことう》にちがいない。しかも秋はすでに去らんとして冬は眼前にせまっている、烈風《れっぷう》ひとたびおそいきたらばサクラ号はまたたくまに波にのまれてしまうだろう。
「だからいまのうちに山田の洞《ほら》にひっこさなければならん」
 とゴルドンはいった。
「ひっこすといっても、船の諸道具《しょどうぐ》や食料などを運ぶには、少なくとも一月《ひとつき》はかかるだろう。そのあいだ、みなはどこに宿るか」
 とドノバンはいった。
「河のほとりにテントを張ることにしよう」
「それにしても、この船をといて洞《ほら》まで持ってゆくのは、なかなかよういなこ
前へ 次へ
全254ページ中49ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング