う、それでもかれは、地図をかいた、その地図は、いまぼくらの唯一《ゆいつ》の案内者となり、その洞穴は、いまぼくらの唯一の住宅となった。ぼくははじめて知った、人間はかならずのちの人のために足跡をのこす、いやのこさなければならんものだ、それが人間の義務だ、だからぼくらものちの人のために、りっぱな仕事をして、りっぱな行ないをつまなければならん、人間はけっして、ひとりでは生きてゆけない、死んだ人でも、のちの人を益《えき》するんだからね、ぼくはいまそれがわかった、きみらはどう思うかね」
「むろん賛成《さんせい》だ」
とサービスがいった。
「みなでこの恩人《おんじん》に感謝《かんしゃ》しようじゃないか」
四人は一|抔《ぼう》の土にむかって合掌《がっしょう》した。
協力
殉難《じゅんなん》の先人山田左門の白骨をぶなの木の下にほうむった四人は、山田ののこした地図をたよりに洞外《どうがい》に流るる河にそうて北西をさしてまっすぐにくだった。ゆくときの困難《こんなん》にひきかえて、帰りは一歩も迷《まよ》うところなく、わずか六時間でサクラ湾《わん》の波の音をきくことができた。もう日はまったく
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