まえね」
「むろんだ、ドノバンはただいばりたいのが病で、性質《せいしつ》は善良なんだから、ぼくはなんとも思っていないよ」
「それでぼくも安心したが、少年|連盟《れんめい》はぼくら三人が年長者だからね、きみとドノバンと仲が悪くなると、まったくみんなが心細がるよ」
「連盟のためには、どんなことでも、しのばなきゃならんよ」
「それで安心した」
 じっさいもう一と月のうちに、一同の住居する土地をきめねばならぬ、サクラ号の損所《そんしょ》はだんだんはげしくなる、このぶんでは、一と月ももたぬかもしれぬのだ。
 四人は四日分の食料《しょくりょう》を準備《じゅんび》した、めいめい一ちょうの旋条銃《せんじょうじゅう》と、短|銃《じゅう》をたずさえ、ほかに斧《おの》、磁石《じしゃく》、望遠鏡《ぼうえんきょう》、毛布《もうふ》などを持ってゆくことにした。
 いよいよあすは出発という日の夕方、一同はこわれた甲板《かんぱん》に食卓《しょくたく》をならべて、しばらくの別れをおしんだ。旅程《りょてい》は四日だが、名も知らぬ土地である。河また河、谷また谷、ぼうぼうたる草は身を没して怪|禽《きん》昼も鳴《な》く、そのあ
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