んぼう》した。ある日かれは、森のかなたに、ほのめく一|条《じょう》のうす青い影を発見した。夕日はかたむくにつれて、影がしだいにはっきりして、ぬぐうがごとき一天の色と、わずかに一すじの線をひくのみである。
「海だ!」
かれは思わずさけんだ。
「海だ!」
もし海とすると、この地は大陸つづきでなく、四方海をめぐらす、はなれ小島であると、思わざるをえない。
かれは丘をおりてサクラ号に帰り、一同にこのことを語ると、一同はあっといったきり、ものもいえなかった。
無人島! 家もなく人もない、いよいよ救わるべき見こみはなくなった。
「そんなことはない」
とドノバンはいった。
「いやたしかに海だ」
「よし、それじゃいけるところまでいって、その実否《じっぴ》をたしかめることにしよう」
「よし、いこう」
遠征委員《えんせいいいん》には、富士男とドノバンのほかに、ドイツ少年のイルコックと、仏国少年のサービスが、ついてゆくことにきめた。ゴルドンもゆきたかったが、かれはるすの少年を保護せねばならぬので、富士男を小陰《こかげ》によんで、ひそやかにいった。
「どうか、ドノバンとけんかしないようにしてくれた
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