動《しんどう》とともに、幼年者たちの泣き声がきこえた。
「巨波《おおなみ》がきた! 巨波がきた!」
幼年者はたがいに、しっかりとだきあった。
「死ぬならいっしょだ」
とゴルドンがさけんだ。船はギイギイと二度ばかり音をたてた、岩礁《がんしょう》の上は、まったく雪のごとき噴沫《ふんまつ》におおわれた、ゴウッというけたたましいひびきとともに、船はふわふわと半天《はんてん》にゆりあげられる。と思うまもなく、モコウのさけび声がきこえた。
「しめたッ」
もう死なばもろともと、眼をつぶっていた少年たちは、一度にたちあがった。
「浜へきた!」
悲しみの声は、一度に笑いの声となった。
「やあふしぎだ」
「波があの大きな岩をこえて、船を砂浜へ運んでくれたのだ」
「バンザアイ」
一同は思わずさけんだ。
「まったく天佑《てんゆう》だ」
富士男はこういってゴルドンにむかい、
「だが船は、ふたたび波にさらわれるかもしれない、とにかく、さしむき、ちいさい人たちの住まいを、きめなきゃならんね、きみとふたりで探検《たんけん》しようじゃないか」
「うん、ぼくもそう思ってたところだ」
ふたりは甲板《かんぱん》
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