ゃないか」
「重大事件だよ」
 とドノバンが、せかせかといっさいを報告した。
「そうか! 敵はもうこのへんをうろついているのか」
 とゴルドンが沈痛《ちんつう》な顔をしてつぶやいた。
「だが、ぼくは銃声をきかなかった」
 とドノバンがいった。
「それはぼくらもきかない、だからといって安心はできない、重傷《じゅうしょう》のラマが、遠いところからにげてきたとは思えないからね」
と富士男がいった。
「この事件は、ぼくら四人の胸にひめておこう、ほかの者にいらぬ心配をさせるのは苦痛《くつう》だから……」
 とゴルドンがいった。
 それから三日目、またまたかれらは、事態《じたい》のますます切迫《せっぱく》したのを知る一新事件にであった。
 この朝、ゴルドンと富士男は、ニュージーランド川をわたって視察《しさつ》にいった。川岸から南のほうの沼《ぬま》にいたるあいだの細道に、防壁をきずいて、ここにドノバンらの鉄砲の名手を伏兵《ふくへい》させ、悪漢どもがこの方面からくるのを、ふせごうと思ったからである。
 二人は地形をしらべながら、茂林《もりん》のなかをすすんだ、鳥がくらいつくしたのか、けものの骨や貝がら
前へ 次へ
全254ページ中202ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング