ンがいった。
「そうだそうだ」
幼年どもはいっせいにゴルドンに賛成した。
「ねえきみ、気持ちを悪くしてくれるなよ」
富士男はドノバンにいった、ドノバンは、それに答えなかった。
そもそもこの陸は大陸のつづきであるか、ただしは島であるか、第一に考えなければならないのは、この問題である。富士男は北に高い丘をひかえ、岩壁《がんぺき》の下に半月形にひらけた砂原を見やっていった。
「陸には一すじの煙も見えない、ここには人が住んでないと見える」
「人が住まないところに、舟が一そうだってあるものか」
とドノバンは冷笑《れいしょう》した。
「いやそうとはいえまい」とゴルドンは思案顔《しあんがお》に「昨夜の嵐《あらし》におそれて舟が出ないのかもしらんよ」
三人が議論《ぎろん》をしているあいだに、他の少年たちはもう上陸の準備《じゅんび》にとりかかった。固《かた》パン、ビスケット、ほしぶどう、かんづめ、塩《しお》や砂糖、ほし肉、バタの類はそれぞれしばったり、つつんだり、袋《ふくろ》にいれたり、早く潮がひけよとばかり待っていた。七時になった。だがいっこう潮が引かない、そのうえに船はますます左にかたむい
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