っこうである、月は午前の二時にならなければ出ない、星の数もまばらである、広場には絞車盤《こうしゃばん》がすえられ、サクラ号が船脚《ふなあし》をはかるために用いた測量索《ロクライン》をまいて、たこの糸とした、たこにつるさがったかごには、重さ六十キログラムの土をもった袋《ふくろ》をつみこんだ、そしてそのふちには、鉄環《かなわ》をつらぬいた糸がゆわえられた、それはちょうど人がのるときと同じである、準備はなった。
 ドノバン、バクスター、イルコック、ウエップの四人は、たこをかかえて九十メートルばかり向こうに去った。富士男、ゴルドン、サービス、グロース、ガーネット、モコウ、と幼年組は絞車盤《こうしゃばん》をまもった。
「よいか」
 と富士男がさけんだ。
「おう」
 とドノバンの答え。
「ソレ!」
 というかけ声とともに、直径《ちょっけい》四メートル半の大だこは、しずしずと、やみ夜の空にのぼりはじめた。
「万歳!」
 と幼年組が一時にさけんだ。
「大きな声を出しちゃいかんよ」
 とゴルドンがたしなめた。
 またたくまにたこは、暗《やみ》のなかにすがたを没した。糸をひく力はますます強くなる、それは一
前へ 次へ
全254ページ中181ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング