ても、自分が第一人者になろうという、アメリカ人特有のごうまんな気性《きしょう》がある。かれはこのために、これまで富士男と衝突《しょうとつ》したのは、一、二度でなかった、そのたびごとにドノバンのしりおしをするのは、イルコック、ウエップのふたりのドイツ少年と、米国少年グロースであった。
かれらは航海のことについては、富士男やゴルドンほどの知識がなかった。だから海上に漂流《ひょうりゅう》しているあいだは、なにごとも富士男の意見にしたがってきたが、いま陸地を見ると、そろそろ性来《せいらい》のわがままが頭をもたげてきたのである。
かれら四人は、ふんぜんと群《む》れをはなれて甲板《かんぱん》の片すみに立ち、反抗《はんこう》の気勢《きせい》を示そうとした。
「待ってくれたまえドノバン」
と富士男はげんしゅくな声でいった。
「ねえドノバン! きみはぼくを誤解《ごかい》してるんじゃないか、ぼくらは休暇《きゅうか》を利用して近海航行を計画したときに、たがいにちかった第一条は、友愛を主として緩急《かんきゅう》相救《あいすく》い、死生をともにしようというのであった、もしわれわれのなかでひとりで単独行為《
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