が、……」
 右岸の十メートルくらいむこうに、ホラホラと燃ゆるたき火の光が、木の間をうがって赤く見える。
「舟をつけよ」
「危険《きけん》ですよご主人! 悪漢《あっかん》かもしれません」
「ドノバンかもしれない」
「わたしもいっしょにつれていってください」
「いや、ぼくがひとりでゆく、きみはボートをまもってくれたまえ」
「そうですか」
 とモコウは鼻を鳴らした。
 身軽《みがる》くボートをとびおりた富士男は、腰刀を右手にぬき、左手に銃をにぎって、火光をたよりに灌木林《かんぼくばやし》をわけすすんだ。
 火を受けた一団の大きな黒い影が、うごめいている。とその一つが、ほえ声とともに身をおどらしてとびかかった。
「あっ! ジャガー(アメリカとら)だ!」富士男はがくぜんとした。
「助けて、助けて!」と絹《きぬ》をさく悲鳴《ひめい》!
「あっ! ドノバンの声だ!」
 富士男はまりのように火光めがけてとんだ。見ればまさしくドノバンが地上に倒れ、赤手《せきしゅ》をふるって格闘《かくとう》している。左のほうの木陰に寄ってイルコックが、銃をかまえてねらいをつけている。
「イルコック! 銃をはなってはいけ
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