に往来して、いまだに秘密に行なわれている奴隷《どれい》売買をいとなんで、一|攫《かく》千金をえようとしたのだ。いまその喧嘩《けんか》の口実《こうじつ》ができた。
「どうしてもきかねえのか」
と海蛇が、酒でにごった眼をギラギラと光らした。
「あたりまえだ」
と船長があおくなっていった。
「おれたちにうまいものを食わせろ」
とひとりがさけんだ。
「うるさい! でてゆけ!」
と船長がさけんだ。
「どうしてもか?」
「親分めんどうくせえ、やっつけろよ」
と四本指がそそのかした。
「よし」
と海蛇がポケットをさぐって、ピストルを出すと、船長をめがけて一発をはなった。
「アッ」と悲鳴《ひめい》とともに、船長があけにそまって倒れた。
「野郎《やろう》ども! ぬかりなくやれよ」
と海蛇がどなった。血を見て凶暴《きょうぼう》になったかれらは、かねての計画を実行に移《うつ》した、まもなくベン夫妻と、一等運転手がたおされた。悪漢《あっかん》どもは完全にセルベン号を占領《せんりょう》した。
ケートはあやうくのがれて、運転手室にかけこんだ、そこにはスペイン人のイバンスが、当直《とうちょく》の勤務
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