ちょうの森へわけいった。しきりに人をよぶフハンのほえ声は、樹間にこだまして悽愴《せいそう》にひびく。
「南のほうだよ」
 とゴルドンがいった。
 声をたよりにゆくこと半町ばかり、フハンが大きな松の木の下に、地をかき、尾をまたのあいだにはさんで、ほえつづけている。
「あっ! 人間だよ!」と次郎がさけんだ。
 なるほど人間らしい形が、松の根もとに横たわっている。四人は足音をしのばせて近づいた、フハンが喜びの声をあげてとんできた。
 それはまさしくひとりの婦人であった。雨にぬれた粗布《そふ》の服をきて、茶色の肩かけをまとった、年のころ四十二、三の女である。髪《かみ》は乱れてあお白くしょうすいした顔にへばりつき、死人のように呼吸《いき》も絶え絶えに昏倒《こんとう》している。
 四人はしばしばものもえいわず、ぼうぜんと立ちつくした。むりもない、この島に漂着《ひょうちゃく》してからここに二年、そのあいだ一行がほかの人間を見るのは、いまがはじめてである。
「まだいきがある」
 とゴルドンが沈黙《ちんもく》を破った。
「餓《う》うえつかれているのだ」
 と富士男がいった。と次郎がとつぜん身をひるがえし
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