イルコックが鼻をつまらした。
「だが、ぼくは夜中にあらしのなかに、人の声をきいた」
 とウエップがいった。
「ぼくもきいた」
 とグロースがいった。
「さがしてみよう」
 とドノバンが岩の上にのぼった。だが、ただ一|様《よう》にほうはいたる巨浪《きょろう》が、無辺《むへん》に起伏するのを見るばかりで、何者の影も見あたらなかった。
「だめだ」
 ドノバンはがっかりしておりてきた。
 ボートは長さ四メートルばかりの伝馬船《てんません》で、帆柱《ほばしら》は根元から折れ、右舷《うげん》はひどく破れていた。きれぎれの帆と、帆綱《ほづな》の断片がちらばっているばかりで、船中にはなにもなかった。
「なにか文字があるぞ」
 船尾《せんび》をしらべていたグロースがさけんだ。一同は走りよった。なるほど、そこにはうすくきえかかった数個の文字があった、ドノバンが読みあげた。
 セルベン号・サンフランシスコ
「あっぼくの国の船だ!」

     難また難

 ドノバンの一行を送りだしたあとの左門洞はあたかも火がきえたようにさびしくなった。ことごとに党規《とうき》をみだそうとした四人ではあったが、さて分離
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