した。
「おい、みんなこいよ」
 少年たちはおどりあがって喜んだ。まっさきにのぼってきたのは猟犬《りょうけん》フハンである。そのつぎには富士男の弟次郎、それから支那《しな》少年|善金《ゼンキン》と伊孫《イーソン》、イタリア少年ドールとコスターの十歳組、そのつぎにはフランス少年ガーネットとサービス、そのつぎにはドイツ少年ウエップとイルコック、おわりに米国少年グロースがのぼってきた。かれらはいちように手をあげて万歳《ばんざい》をとなえた。
 午前六時、船はしずかに岸辺についた。
「気をつけろよ、岩が多いから乗りあげるかもしらん、そのときにあわてないように、浮き袋をしっかりとからだにつけていたまえ」
 富士男は人々に注意した。するすると船は進んだ、とつぜんかすかな音を船底《せんてい》に感じた。
「しまった!」
 船ははたして暗礁《あんしょう》に乗り上げたのであった。
「モコウ、どうした」
「乗りあげましたが、たいしたことはありません」
 じっさいそれは不幸中のさいわいであった、船は暗礁《あんしょう》の上にすわったので、外部には少しぐらいの損傷《そんしょう》があったが、浸水《しんすい》するほど
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