れば、その下におどる白泡《しらあわ》の狂瀾《きょうらん》がしだいしだいに青みにかえって、船は白と青とのあいだを一直線にすすむ。
「おう、陸だ」
 富士男はさけんだ。見よ、煙霧の尾が海をはなるる切れ目の一せつなに、東の光をうけてこうごうしくかがやける水平線上の陸影《りくえい》! 長さ約八キロもあろう。
「陸だ! 陸だ!」
 声は全船にあふれた。
「ラスト・ヘビーだ!」
 船はまっすぐに陸をのぞんで走った。
 近づくままに熟視《じゅくし》すると、岸には百|丈《じょう》の岩壁《がんぺき》そばだち、その前面には黄色な砂地がそうて右方に彎曲《わんきょく》している、そこには樹木がこんもりとしげって、暴風雨のあとの快晴の光をあびている。富士男は甲板《かんぱん》の上からしさいに観察して、いかりをおろすべきところがあるやいなやを考えた。だが岸には港湾らしきものはない、なおその上に砂地の付近には、のこぎりの歯のような岩礁《がんしょう》がところどころに崛起《くっき》して、おしよせる波にものすごい泡《あわ》をとばしている。
 富士男はそこで、船室にひそんでいた十一人の少年たちを、甲板《かんぱん》に集めることに
前へ 次へ
全254ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング