く別の人であってほしいような気がした。
六月十日の午後、選挙会が開かれた。めいめいは紙片に候補者《こうほしゃ》の名をしるして箱に投ずることとなった。ゴルドンは英国人特有のげんしゅくな態度《たいど》で選挙長のいすについた。
選挙の結果は左のごとくであった。
富士男――九点。ドノバン――三点。ゴルドン――一点。
富士男は最大多数であった。ゴルドンとドノバンは選挙権をすて富士男はゴルドンに投票し、ウエップ、グロース、イルコックはドノバンに投票したのであった。
票数《ひょうすう》がよみあげられ、大統領は富士男と決定した、ドノバンは絶望《ぜつぼう》のあまり面色《めんしょく》を土のごとくになしてくちびるをかんでいた。富士男はひじょうにおどろいて百方|辞退《じたい》したが規律《きりつ》なればいたしかたがなかった。
「ぼくはとてもその任ではないと思うけれども、ゴルドン君に助けてもらったらあやまちなくやってゆけるだろうと思う」
かれはこういってようやく就任《しゅうにん》した。万歳の声が森にひびき雪の野をわたって平和湖までとどろいた。
この夜富士男はひそかに弟の次郎をよんだ。
「次郎君、ぼく
前へ
次へ
全254ページ中116ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング