ない」
「きみはだまっていたまえ」
 ゴルドンはこういって富士男にむかい、
「どうしてこんなことになったのだ」
「ドノバン君がぼくを卑劣だといっただけなら、ぼくはききながしておくつもりだったのだ、だがかれは遊戯に負けたくやしさのやり場がないところから、ぼくをカンニングだの卑劣だのといったうえに、ジャップは卑劣《ひれつ》だ、有色人種は卑劣だといったから、ぼくはちょっとジャップの腕前《うでまえ》はどんなものかを見せてやっただけだ」
「ほんとうか」
 ゴルドンは顔色をかえてドノバンにいった。
「ほんとうとも、ぼくの本国では日本人と犬入るべからずと書いた紙札を畠《はたけ》に立ててあるんだ」
「きみは……けしからんことをいう」
 とゴルドンはどなった。
「このとおりだ」と富士男は笑って「アメリカ人が犬であるか、日本人が犬であるか、いまぼくがいうまでもなく諸君がわかったろう。諸君、ぼくは高慢《こうまん》なアメリカ人、伝統《でんとう》のないアメリカ人、礼儀《れいぎ》も知らず道義も知らず物質万能《ぶっしつばんのう》のアメリカ人、とこういったなら米国人はどんな気持ちがするだろう。おたがいにその国をののし
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