に一点の帆影《はんえい》も見えない、一|寸《すん》の陸影《りくえい》も見えない。
「やはり海ですね」
とモコウはがっかりしていった。
「たぶんそうだろうとは思ったが……いよいよぼくらは絶海の孤島に漂着《ひょうちゃく》したことがたしかになった」
とぼくはいった。そうしてぼくはこの湾に命名した。
「失望湾《しつぼうわん》」
このときモコウは、あわただしくぼくの腕をとらえてさけんだ。
「あれはなんでしょう」
モコウの指さすほうを望み見ると、水天|髣髴《ほうふつ》のあいだに一点の小さな白点がある。ぼくは雲のひときれだろうと思った、だがじっとそれを見ているが白点は少しも動かぬ、大きくもならなければ小さくもならぬ。
「山だ、だが山はあんなに白く見えるはずがない」
ぼくらはなおもかわるがわる望遠鏡をとってながめたが、もう太陽は西にかたむいて海波に金蛇《きんだ》がおどれば、蒼茫《そうぼう》たるかなたの雲のあいだに例の白点が消えてしまった。
「波が太陽の光線を反射したのでしょう」
とモコウがいった。
「そうだそうだ」
と次郎もいった。だが僕にはどうしても単に光線の反射とのみは思えなかった。
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