ルドンのように植物学にくわしくないが、これは博物館で見たことのあるストーンパインであるとわかった。ストーンパインの実のなかには楕円形《だえんけい》のかたい実《み》があって生のまま食うとかんばしい、またこれから油をとることもできる。
樹間にはだちょう、のうさぎの類がいかにも愉快げに遊んでいる、二頭のラマが木蔭に休んでるのも見た。
十一時ごろから川の行く手に一道のうっすりとした青い色が、しだいしだいに地平線上にあらわれた、それは海であった。
この湾はサクラ湾とはまったくおもむきを異《こと》にし、サクラ湾のように一帯の砂地ではなく、無数の奇岩怪石《きがんかいせき》があるいは巨人のごとくあるいはびょうぶのごとくそこここに屹立《きつりつ》している、しかもこの岩と岩のあいだには冬ごもりに適当な洞穴がいくつもいくつもあった、もしぼくらが最初にここに漂着《ひょうちゃく》したなら、このところを住まいとなしたであろう。
ぼくはこんなことを考えながら望遠鏡をとって東のほうを熱心にながめた、双眸《そうぼう》のふるかぎりはただ茫々寂々《ぼうぼうじゃくじゃく》たる無辺《むへん》の大洋である。
そのあいだ
前へ
次へ
全254ページ中101ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング