んぼう》した。ある日かれは、森のかなたに、ほのめく一|条《じょう》のうす青い影を発見した。夕日はかたむくにつれて、影がしだいにはっきりして、ぬぐうがごとき一天の色と、わずかに一すじの線をひくのみである。
「海だ!」
かれは思わずさけんだ。
「海だ!」
もし海とすると、この地は大陸つづきでなく、四方海をめぐらす、はなれ小島であると、思わざるをえない。
かれは丘をおりてサクラ号に帰り、一同にこのことを語ると、一同はあっといったきり、ものもいえなかった。
無人島! 家もなく人もない、いよいよ救わるべき見こみはなくなった。
「そんなことはない」
とドノバンはいった。
「いやたしかに海だ」
「よし、それじゃいけるところまでいって、その実否《じっぴ》をたしかめることにしよう」
「よし、いこう」
遠征委員《えんせいいいん》には、富士男とドノバンのほかに、ドイツ少年のイルコックと、仏国少年のサービスが、ついてゆくことにきめた。ゴルドンもゆきたかったが、かれはるすの少年を保護せねばならぬので、富士男を小陰《こかげ》によんで、ひそやかにいった。
「どうか、ドノバンとけんかしないようにしてくれたまえね」
「むろんだ、ドノバンはただいばりたいのが病で、性質《せいしつ》は善良なんだから、ぼくはなんとも思っていないよ」
「それでぼくも安心したが、少年|連盟《れんめい》はぼくら三人が年長者だからね、きみとドノバンと仲が悪くなると、まったくみんなが心細がるよ」
「連盟のためには、どんなことでも、しのばなきゃならんよ」
「それで安心した」
じっさいもう一と月のうちに、一同の住居する土地をきめねばならぬ、サクラ号の損所《そんしょ》はだんだんはげしくなる、このぶんでは、一と月ももたぬかもしれぬのだ。
四人は四日分の食料《しょくりょう》を準備《じゅんび》した、めいめい一ちょうの旋条銃《せんじょうじゅう》と、短|銃《じゅう》をたずさえ、ほかに斧《おの》、磁石《じしゃく》、望遠鏡《ぼうえんきょう》、毛布《もうふ》などを持ってゆくことにした。
いよいよあすは出発という日の夕方、一同はこわれた甲板《かんぱん》に食卓《しょくたく》をならべて、しばらくの別れをおしんだ。旅程《りょてい》は四日だが、名も知らぬ土地である。河また河、谷また谷、ぼうぼうたる草は身を没して怪|禽《きん》昼も鳴《な》く、そのあいだ猛獣《もうじゅう》毒蛇《どくじゃ》のおそれがある、蕃人《ばんじん》襲来《しゅうらい》のおそれもある。
しばしの別れだが、使命は重かつ大、どこでどんな災殃《さいおう》にあうかもしれぬのだ。ゆくものも暗然《あんぜん》たり、とどまるものも暗然たり、天には一点の雲もなく、南半球の群星はまめをまいたように、さんぜんとかがやいている。そのなかにとくに目をひくは、南半球においてのみあおぎみることのできる、南十字星である。
「どうかぶじに帰ってくれ」
「おみやげたのむぞ」
一同は十字星の前にひざまずいて、勇士の好運をいのった。
翌朝七時、富士男、ドノバン、イルコック、サービスの四人は、ゴルドンのすすめによって、猟犬フハンをしたがえて出発した。
浜にそうて岩壁《がんぺき》をよじ、川をさかのぼりて森にいる。ひいらぎバーベリ等の極寒地方《ごくかんちほう》に生ずる灌木《かんぼく》は、いやがうえに密生して、荊棘《けいきょく》路《みち》をふさいでは、うさぎの足もいれまじく、腐草《ふそう》山《やま》をなしては、しかのすねも没すべく思われた。
どうかすると少年らは、高草のためにまったくすがたを見失うことがあるので、たがいに声をかけあうことにした。七時になるともう日はしずんで、前進することができない。四人は森のなかに一|泊《ぱく》することにした。
翌日四人はふたたび前進をつづけた、四人の目的は、この地が、島か大陸かを見さだめることと、いま一つは、冬ごもりをする洞穴《どうけつ》を、さがしあてることである。四人は大きな湖水のへんを歩きつづけた、だがこの日もまた、一頭の猛獣《もうじゅう》にもあわず、一点の人の足あとも発見しなかった。ただ二、三度、なんとも知れぬ大きな鳥が、森のなかを歩いているのを見た。
「あれはだちょうだ」
とサービスはいった。
「もしだちょうとすればもっとも小さいだちょうだ」
とドノバンは笑った。
「しかしだちょうだとすると、ここはアメリカかもしれんよ、アメリカはだちょうが多い」
四人はこの夜、小さな川のほとりに野営《やえい》した。
第三日の朝四人は、川の右岸にそうて、流れをおうてゆくと右に一帯の岩壁《がんぺき》を見た。
「やあ、サクラ湾《わん》の岩壁《がんぺき》のつづきじゃないか」
とサービスがいった。サクラ湾《わん》とは、少年連盟のサクラ号が漂着《ひょうちゃ
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