のだ、もし諸君がかれらに修繕器具を貸してやれば、かれらはそのつぎに諸君の食料を要求《ようきゅう》するだろう」
 イバンスのこのことばをきいて、
「パン粉をとられるとこまるなア」
「あすどこかへかくしておこう」
 幼年組の連中がささやいたので、一同|苦笑《くしょう》した。
 イバンスはなおも語をついだ。
「そればかりでない、かれらは諸君がサクラ号のおかねを、かくしていると思っているから、修繕器具を貸してやっても、恩義に感ぜずに、貨幣掠奪《かへいりゃくだつ》の計画をするにちがいない。また硝薬《しょうやく》の少ないかれらは硝薬も要求するだろう、諸君はかれらのこの要求が入れられるか」
「いや」
 とゴルドンは強くいいきった。
「諸君がかれらの要求をきかなければ、かれらは諸君を子どもとあなどって、腕づくでもかすめるにちがいない。そのときには、戦いあるのみだ、戦いをまぬがれえないと知ったら、はじめから計画をきめて戦うのが有利である。それにかれらの伝馬船《てんません》がなかったらわれわれはどうして島をのがれるつもりか」
 イバンスの最後の一語をきいた少年たちは、疑惑《ぎわく》を感じた。
「かの小船で、洋々たる大洋を、横断するのですか」
「大洋を横断する? いやわれわれは、まず南米に近い港《みなと》にわたって、便船《びんせん》を求めるつもりである」
 イバンスのこのことばは、少年たちをますます混乱《こんらん》させた。
「しかしあんな小船で、数百キロの波濤《はとう》を、越えることができますか」
 とバクスターは質問《しつもん》した。
「数百キロ? いや港までは、きんきん五十キロを出ない航程《こうてい》です」
「ではこの島は、大洋中の孤島《ことう》ではないのですか」
「島の西方は大洋であるが、東南北は大洋ではありません。諸君はこの島を、大洋中の孤島だと思ったのですか」
 少年たちは目を見張って、イバンスのことばを待っている。
「島は島であるが、孤島ではない。南アメリカのチリー国の西岸に点在する群島中の一つです。あした地図にてらして、本島の所在および方位について、くわしく説明しましょう」
 とイバンスは語りおわった。
 いままで大洋中の一孤島とのみ思っていた少年たちは、イバンスのことばをきいて、ひじょうに喜んだ。この喜びに幼年組は海蛇《うみへび》の恐怖《きょうふ》をわすれて安眠した。
 
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