う、すなわち、たこに乗って、ニュージーランドの家に、ぼくらの窮状《きゅうじょう》を知らせようというのです、ぼくは、一婦人がたこに乗って、空中に飛揚《ひよう》することをこころみて、成功したことを、ある本で読んだことを記憶《きおく》します、いまこれにならってたこを利用し、空中にのぼり、全島のもようを見たら、ぼくらが一日も安心のできない悪漢どものありさまを知ることができると思う」
 富士男の大胆《だいたん》な計画に、一同は眼をみはった。
「しかし、たこははたして、ぼくらのひとりをもちあげる力があるだろうか」
 とドノバンがいった。
「それは物置《ものお》きにあるたこでは不十分だ、だがさらに大なる、さらに堅固《けんご》なものに改造したら、だいじょうぶだと思う」
「たこは一度あがったら、いつまでもそのままでいることができるだろうか」
「それはだいじょうぶだ」
 と工学博士のバクスターが、沈黙《ちんもく》を破ってうなずいた。
「工学博士の保証《ほしょう》があるならだいじょうぶだ、ぼくの小説的空想は、いま実をむすんだ」
 とサービスが鼻孔《びこう》をふくらました。
 一同は笑った。
「富士男君、いったいどのくらいの高さまであげようというのだい」
 とバクスターがいった。
「そうだ、二百メートルぐらいの高さにまで達したいと思うんだ、そうすれば島のもようを見おろすことができる」
「さっそく、ぼくらは実行にうつろう、ぼくらはもうたいくつでたいくつでならないんだからね」
 とサービスが腕をなでた。一同はこの新たなる計画に、眼をギラギラと光らして賛成した。
「製作主任はやっぱりバクスター君にまかせよう」
「それがいい」
「万歳!」
 一同の意気はとみにあがった、だがただひとり、ゴルドンはしじゅう黙然《もくねん》と腕を組んで一言も発しなかった。思慮《しりょ》深いかれはこの冒険《ぼうけん》をあやぶんだ。一同が食堂を去ったのち、かれは富士男に近づいた。
「富士男君、きみはほんとうにこの計画を実行しようというのか」
「そうだ、ぼくはぜひやりたい」
「だがそりゃあまりに危険《きけん》な計画だ」
「ぼくもそう思う」
「そしてだれがみずから一命をかけて、この冒険《ぼうけん》をやるのだ、まちがえば尊《とうと》い人命をなくすのだ」
「ゴルドン君、心配しないでくれたまえ、ぼくには信ずるところがあるのだ」
「ま
前へ 次へ
全127ページ中89ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング