て生きていられないのだ、ぼくは悪いやつと戦わなきゃならない、この世の悪漢をことごとく撃退して正義の国にしようと思えばこそぼくらは学問をするんじゃないか」
「それはそうだが、しかし強いやつにはかないません、正義正義といったところで、ぼくの伯父は監獄《かんごく》へやられる、阪井は助役でいばってる、それはどうともならないじゃありませんか」
 ふたりは警察署の前へきた、いましも七、八人の人々がひとりの男を引き立てて門内へはいるところであった。チビ公は電気に感じたようにおどりあがって人々の後を追うた。とまたすぐもどってきた。
「伯父さんかと思ったらそうでなかった」
 かれは安心したもののごとく眼を輝かした、そうしてこういった。
「喧嘩して人をきったんですって、それはいいことではないが、ぼくはああいう人を見ると、なんだか、その人の方が正しいような気がしてなりません、時によるとぼくもね、ぼくがもし身体《からだ》がこんなにチビでなかったら、もう少し腕に力があったら、悪いやつを片っ端から斬《き》ってやりたいと思うことがあります、身体が小さくて貧乏で、弱い母親とふたりで伯父さんの厄介《やっかい》になってい
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