た。
「ああ柳さん」
「どこへゆく?」
光一はチビ公が豆腐おけもかつがないのをふしぎに思った。
「ぼくのおじさんを見ませんか」と千三はうろうろしていった。
「いや、見ない」
「ああそうですか、今朝《けさ》から家をでたきりですからな、また阪井の家へどなりこみにいったのではないかと思ってね」
千三はなきだしそうな顔をしていた。
「心配だろうね、ぼくも一緒《いっしょ》にさがしてあげよう」
五
チビ公と光一は裏門通りから清水屋横町へでた。そこでチビ公は知り合いの八百屋《やおや》にきいた。
「家の伯父さんを見ませんか」
「ああ見たよ」と八百屋がいった。
「さっきね丸太《まるた》ん棒《ぼう》のようなものを持ってね、ここを通ったから声をかけるとね、おれは大どろぼうを打ち殺しにゆくんだといってたっけ」
「どこへいったでしょう」
「さあ、停車場の方へいったようだ」
「酔ってましたか」
「ちとばかし酒臭かったようだったが、なあチビ公早くゆかないと、とんだことになるかもしれないよ」
「ありがとう」
チビ公はもう胸が一ぱいになった、ようやく監獄《かんごく》からでてきたものがまたし
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