る憤怒《ふんぬ》に燃えていた。どういう理由か知らぬが、校長がぼくの家へ見舞いにきただけで政党が校長を排斥するのはあまりに陋劣《ろうれつ》だ。
小原のいうごとく久保井先生のようなりっぱな校長はふたたび得られない。いまの先生方のようなりっぱな先生もふたたび得られない。それにかかわらず学校がめちゃめちゃになる、それではぼくらをどうしようというんだろう、政党の都合がよければ学校がどうなってもかまわないのだろうか。
そんなばかな話はない、これは正義をもって戦えばかならず勝てる、父に仔細《しさい》を話してなんとかしてもらおう。
いろいろな感慨《かんがい》が胸にあふれて歩くともなく歩いてくると、かれは町の辻々《つじつじ》に数名の巡査が立ってるのを見た、町はなにやら騒々しく、いろいろな人が往来し、店々の人は不安そうに外をのぞいている。
「なにがはじまったんだろう」
こう考えながら光一は家の近くへくると、向こうから伯父さんの総兵衛が急ぎ足でやってきた、かれはしまの羽織《はおり》を着てふところ一ぱいなにか入れこんで、きわめて旧式な山高帽《やまたかぼう》をかぶっていた。伯父さんはいつも鳥打帽《とりう
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