おれは無フンだ」
千三はまたしても帯をといて手塚をしばりあげた。投げられたろばといまひとりは安場がしばった。安場は三人を電柱にしばりつけた。
光一の横顔は腫《は》れ、手首はくじかれていた。千三にはなんのけがもない。
「おい青木」と光一は千三の前にひたと座っていった。「おれをなぐってくれ、おれは悪かった、さあおれがきみにしたようにおれの顔のどこでもなぐってくれ」
「なにをいうか柳」と千三は光一にひたとより添うて手をしっかりとにぎった。
「ぼくは今夜きみの演説で真の英雄がわかった、ぼくらはおたがいに英雄じゃないか、正義の英雄だよ」
「ゆるしてくれるか」
「ゆるすもゆるさんもないよ」
「ありがとう」
ふたりはふたたび手をにぎりしめた。
「やい、凡人主義のデモクラシーの偶像破壊者共」と安場は三人に向かっていった。
「平等と自由はどんなものか明日《あした》の朝までそこで考えて見ろ」
「なわだけはといてやってくれ」と光一が安場にいった。
「いやいや」と安場は頭をふった。「英雄にしばられてなわをとくのはデモクラシーの役目なんだ、さあゆこう」
こういって安場はマッチをパッとすって三人の顔を見た
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