うか」
こう思って暗い地面を探り探り並み木の間を歩いた。いままで気がつかなかったがこのとき足の拇指《おやゆび》が痛みだした。手をやってみると生爪《なまづめ》がはがれてある、かれは大地に座りこんだ。そうしてへこ帯をひきさいて足を繃帯《ほうたい》することに決めた。
とどこからとなく人の声が聞こえる。
「きたか」
「まだまだ」
「気をつけろよ」
「にがしちゃいかんよ」
ひとりの声は手塚らしい。あとは四、五人、しのびしのびに三方に埋伏《まいふく》する。
「なにをしてるんだろう」
千三はこう思った。こういうことはめずらしくない。青年の喧嘩だ。毎日一つぐらいはあるのだ。
「だがねえ、文子はこのごろちっともこないじゃないか」
ひとりの声がきこえる。
「手紙を見られたらしいよ」と他の声。
「見られてもかまやしない、あれはねチビの名にしてあるんだから……はッはッはッチビのやつそれでひどくなぐられたっけ」
千三の総身がぶるぶるとふるえた。かれははじめてそれが手塚の奸策《かんさく》だと知ったのである。かれは立ちあがってかれらのあとを追いかけようと思った。が足の痛みは骨をえぐられるようにはげしい。
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