英雄でもない、ぼくは正義の英雄を讃美する、いやしくも正義であれば武芸がつたなくとも、知謀がなくとも、学校を落第しても、野球がまずくとも、金持ちでも貧乏でも、すべて英雄である、この故にぼくはこういいたい、『すべての人は英雄になり得る資格がある』と」
なんともいいようのない厳粛な気が会場を圧してしばらく水をうったように沈黙したかと思うと急に拍手喝采が怒濤のごとくみなぎった。手塚はどこへ行ったか姿が見えない。千三は呼吸もつけなかった。かれは光一の論旨には一点のすきもないと思った。
「畜生《ちくしょう》ッ、うまくやりやがった」
こう思うとせっかくの復讐心《ふくしゅうしん》も一半《いっぱん》はくじかれてしまった。
「つまらない、こなければよかった」
かれはいまいましさにたえかねて会場をでた。外は漆《うるし》のごとくくらい。ふりかえってみると学校の窓々からこうこうと灯《ひ》の光がほとばしっていた。千三は一種の侮辱を感じながら歩くともなく歩きつづけた。とかれは路傍《ろぼう》の石につまずいてげたのはなおをふっつりと切らした。
「大変だ」
かれは途方《とほう》にくれた。
「なわきれが落ちてなかろ
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