ん》と流れた小河の水が一瀉《いっしゃ》して海にいるやいなや怒濤《どとう》澎湃《ほうはい》として岩を砕《くだ》き石をひるがえした。光一の舌頭は火のごとく熱した。
「野淵君は漫然と英雄のご利益《りやく》をといたが、いかなるものがこれ英雄であるかを説《と》かない、正しき英雄とよこしまなる英雄とを一括《いっかつ》して概念的にその可《か》不可を論ずるは論拠においてすでに薄弱である」
「ひやひや」と手塚は立ちあがって叫んだ。
「待ちたまえ、さらに手塚君の説を駁《ばく》さねばならん、手塚君は英雄は個人主義である、英雄は民衆を侵掠《しんりゃく》したといった、侵掠か征服かぼくはいずれたるかを知らずといえども、弱者が強者に対して侵掠呼ばわりをするのは今日の悪思想であります、婦人は男に対して乱暴よばわりをなし、貧者は富者に対して圧迫よばわりをなし、なまけ者が勤勉者に対して傲慢《ごうまん》よばわりをなす、ここにおいてプロレタリアはブルジョアをのろい、労働者は資本家をのろい、人民は政府をのろい、人は親をのろい、妻は良人《おっと》をのろう、そもそもそれははたして正しきことであるか、思うに民衆といいデモクラシーと叫
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