もそも諸君は足利尊氏《あしかがたかうじ》、平清盛《たいらのきよもり》、源頼朝《みなもとのよりとも》をも英雄となすであろう。かれらは国賊である、臣子の分をみだすものは他に百千の功ありとも英雄と称することはできない、古来英雄と称するものは大抵《たいてい》奸雄《かんゆう》、梟雄《きょうゆう》、悪雄の類である、ぼくはこれらの英雄を憎む、それと同時に鎌足《かまたり》のごとき、楠公《なんこう》のごとき、孔子《こうし》のごとき、キリストのごとき、いやしくも正義の士は心をつくし気を傾《かたむ》けて崇拝する、それになんのふしぎがあるか、万人に傑出する材ありといえども弓削道鏡《ゆげのどうきょう》を英雄となし得ようか、三帝を流し奉《たてまつ》りし北条《ほうじょう》の徒を英雄となし得ようか、諸君! 諸君は西郷南洲《さいごうなんしゅう》を英雄なりと称す、はたしてかれは英雄であるか、かれは傑出したる人材に相違ないが、いやしくも錦旗《きんき》にたいして銃先《つつさき》を向けたものである、すでに大義に反す、なんぞ英雄といいえよう」
 ひつじは俄然《がぜん》虎になった。処女は脱兎《だっと》になった。いままで湲々《えんえ
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