なかったらどうであろう、春風長堤をふけども落花にいななける駒《こま》もなし、南朝四百八十寺、甍《いらか》青苔《せいたい》にうるおえども鎧《よろい》の袖《そで》に涙をしぼりし忠臣の面影《おもかげ》をしのぶ由もなかろう、花ありてこそ吾人は天地の美を知る、英雄ありてこそ人間の偉《い》なるを見る、人類の中にもっとも秀《ひい》でたるものは英雄である、英雄は目標である、羅針盤《らしんばん》である、吾人はその経歴や功績を見てたどるべき道を知る、前弁士は清盛《きよもり》、頼朝《よりとも》、太閤《たいこう》、家康《いえやす》、ナポレオンを列挙し吾人の祖先がかれらに侵掠《しんりゃく》せられ、隷使《れいし》されたといったがいずれのときに於《お》いても民衆の上に傑出せる英雄が生ずるのである。清盛《きよもり》、頼朝《よりとも》、太閤《たいこう》、家康《いえやす》、ナポレオンが生まれなければ、他の英雄が生まれて天下を統一するであろう、非凡の才あるものが凡人を駆使《くし》するのは、非凡の科学者が電気や磁気や害虫や毒液を駆使すると同じである。露国《ろこく》はソビエト政府を建てたがかれらを指揮するものはレーニンとトロツ
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