くが!」
「あそこの松のところで妹と話をしていたのだ、それをおれが見た、きさまから妹にやった手紙も見た、知らないとはいわせないよ、ばかッ」
「おい柳! どうしたというんだ、ぼくがきみの妹を? きみ! きみ! それは嘘《うそ》だ、とんでもないことだ、きみ、誤解しちゃいけないよ」
「白ぱっくれるなよ、おれには証拠がある」
「じゃ証拠を見せたまえ」
「証拠はこれだ」
光一は拳骨《げんこつ》を固めて千三の横面をなぐった。あっと千三は頬《ほお》に手をあてた。かれは火のごとく顔を赤くしたがやがて目に一ぱいの涙をためた。
「きみはぼくをなぐったね」
「無論だ、文句があるならかかってこい」
「柳君!」と千三は光一の腕《うで》をとった。「きみは後悔《こうかい》するぞ、きみはぼくをそんな人間だと思っていたのか、きみは……」
「なにを? 生意気な」
光一は千三を横に払《はら》った。千三は松の根につまずいて倒れた。筒袖《つつそで》の袷《あわせ》にしめた三尺帯がほどけて懐《ふところ》の写生帳が鉛筆と共に大地に落ちた。このときお宮の背後から手塚が現われた。
「やあ柳! どうしたのだ」と手塚がいった。
「こいつ
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