顔をつきあわしてなにか語った。文子はろばをはじめとして他のふたりの少年とはあまり親しくなかったのでなんとなき不安を感じながら立っていた。
「いきましょう」と新ちゃんは文子に近づいていった。
「私の家へいってくださる?」
「ああおよりするわ、でもなにか食べてからにしましょうよ」
「なにを食べるの?」
「私ね、おしるこを食べたいわ、それともチャンにしましょうか」
「チャンてなあに」
「支那料理よ」
「私食べたことはないわ」
「おいしいわ」
 文子は学校で友達から支那料理のおいしいことを聞いていた。どんなものか食べてみたいと母にいったとき、母はそんなものはいけませんと拒絶《きょぜつ》した。
「だが食べてみたい」
 好奇心が動いた。
「でも私お金が……」
「私持ってるからいいわ」
「いけない」と文子は猛然《もうぜん》と思い返した、母に禁ぜられたものを食べること、他人のご馳走《ちそう》になること、これはつつしまねばならぬ。
「私|叱《しか》られるから」
「叱られる?」
 新ちゃんはにやにやとわらったがやがてまたいった。
「じゃよしましょうね」
 ふたりは活動写真館の前へ出た、日曜のこととて館前は
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