はこれは」
ふたりは一つのさかずきを献酬《けんしゅう》した。善兵衛はいろいろ野球の方法を話したが覚平にはやはりわからなかった。
「つまり球を打ってとれないところへ飛ばしてやればいいんです」
「なるほどね」
ふたりが草に座ってかつ飲みかつ語ってるうちに見物人は刻々《こっこく》に加わった。中学の生徒は制服制帽整然とうちそろうて一塁側に並んだ。その背後には中学びいきの大人《おとな》連が陣取っている、その中に光一の伯父さん総兵衛《そうべえ》がその肥《ふと》った胸を拡げて汗をふきふきさかんに応援者を狩《か》り集めていた、かれは甥《おい》の光一を勝たせたいために商売を休んでやってきたのである。
この日師範学校の生徒は黙々塾《もくもくじゅく》に応援するつもりであった、師範と中学とは犬とさるのごとく仲が悪い、だがこの応援は中止になった、いかんとなれば審判者《しんぱんしゃ》は師範の選手がたのまれたからである、で師範は中立隊として正面に陣取った。
「早く始めろ」
「なにをぐずぐずしてるんだ」
気の短い連中は声々に叫んだ、この溢《あふ》るるごとき群衆をわけて浦和中学の選手が英気さっそうとして場内に現
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