見られようと思って、片手で球をとったりする、あれはよくないぞ、へたに見られてもいいから健実でなけりゃいけない」
先輩の一言に手塚は顔を赤《あから》めてだまった。その日から練習をはじめた。
一方|黙々塾《もくもくじゅく》では学業のひまひまに猛練習をつづけた。だが家業がいそがしいために練習にくることのできない者もあるので、人数はいつもそろわなかった、安場は日曜以外には帰省しない、ここにおいて黙々先生が自身に空《あ》き地《ち》へ出張した、先生は野球のことをよくは知らない、がかれは撃剣の達人なので打撃はうまかった、かれはさるまた一つとシャツ一枚の姿で、自製のバットでノックをする、それは実に奇妙ふしぎなノックであった、先生の打つ球には方向が一定しない、三塁へいったり一塁へいったり、ゴロかと思えば外野へ飛んだり、ファウルになったり、ホームランになったりする。
「先生! シートノックはシートの方へ打ってください」と千三が歎願した。
「ばかッ、方向がきまってるならだれでもとれる、敵はどこへ打つかわかりゃしないじゃないか」
先生はこういって長いバットを持って力のありたけで打つのだからたまらない、鉄
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