義において間違いはない、書を読むに文字を読むものがある、そんなやつは帳面づけや詩人などになるがいい。また文字に拘泥《こうでい》せずにその大意をにぎる人がある、それが本当の活眼をもって活書を読むものだ、よいか、文字を知らないのは決して恥でない、意味を知らないのが恥辱だぞ」
こういって先生はつぎの少年に向かった。
「日本の歴史中に悪い人物はたれか」
いろいろな声が一度にでた。
「弓削道鏡《ゆげのどうきょう》です」
「蘇我入鹿《そがのいるか》です」
「足利尊氏《あしかがたかうじ》です」
「源頼朝《みなもとのよりとも》です」
「頼朝はどうして悪いか」と先生が口をいれた。
「武力をもって皇室の大権をおかしました」
「うん、それから」
武田信玄《たけだしんげん》というものがある。
「信玄はどうして」
「親を幽閉《ゆうへい》して国をうばいました」
「うん」
「徳川家康《とくがわいえやす》!」
「どうして?」
「皇室に無礼を働きました」
「うん、それで、きみらはなにをもって悪い人物、よい人物を区別するか」
「君には不忠、親に不孝なるものは、他にどんなよいことをしても悪い人物です、忠孝の士は他に欠
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