の先生は校長を見送ってから辞職するそうだ」
 このうわさはますます一同の神経をいらだたせた。
「学校を焼いてしまえ」
 だれいうとなくこの声が非常な力をもって伝播《でんぱ》した。
「しずかにしたまえ、諸君、決して軽々しいことをしてくれるな」
 小原は血眼になって叫《さけ》びまわった、とこのとき三年生は調神社《つきのみやじんじゃ》に集まって何事かを計画しているといううわさがたった。
「いってみる」と小原はいった。「柳君、しばらくたのむぜ」
 かれはげたをぬぎすててはだしになった、そうしてはかまを高くかかげて走りだした。
 この熱烈な小原の誠意に何人《なんぴと》も感歎せぬものはなかった。
「おれもゆく」
「おれも……」
 後藤という投手と浜井という三塁手はすぐにつづいた。
「学校の体面を思えばこそ小原も浜井も後藤もあのとおりに奔走してるんだ、諸君はどう思うか」
 柳がこういったとき一同は沈黙した。
「ああありがたいものは先輩だ」と柳はつくづく感じた。
 ものの二十分とたたぬうちに町のあなたにさっと土ほこりがたった。大通りの曲がり角から三年生の一隊があらわれた、かれらはちょうど送葬の人のごと
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