二枚、綿入れならば一枚半、また股引《ももひき》は四足《しそく》縫い上ぐるを定めとし、古き直し物も修繕の大小によりて予《あらかじ》め定数あり、女監取締り一々これを割り渡すなり。妾《しょう》は固《もと》より定役なき身の仮令《たとい》終日|書《しょ》を伴《とも》とすればとて、敢《あ》えて拒む者はあらざるも、せめては、婦女の職分をも尽して、世間の誤謬《ごびゅう》を解《と》かん者と、進んで定役ある女囚と伍し、毎日定役とせる物を仕上げてさて二時間位は罷役《ひえき》より前にわが監房に帰り、読書をなすを例とせり。されば妾出獄の時は相応の工賃を払い渡され、小遣い余りの分のみにてもなお十円以上に上《のぼ》りぬ。これは重禁銅《じゅうきんこ》の者は、官に七分を収めて三分を自分の所有とするが例なるに、妾はこれに反して三分を官に収め七分を自分の有《ゆう》となしければ、在監もし長からんには相応の貯蓄も出来て、出獄の上はひとかどの用に立ちしならん。
三 藤堂《とうどう》家の老女
妾の幸福《さいわい》は、何処《どこ》の獄にありても必ず両三人の同情者を得て陰《いん》に陽《よう》に庇護《ひご》せられしことなり。中
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