んが如く、われながら暫《しば》しは顔も得上げざりき。典獄は沈思《ちんし》してそうあろうそうあろう、察し申す、ただこの上は獄則を謹守し、なお無頼《ぶらい》の女囚を改化遷善の道に赴《おもむ》かしむるよう導き教え、同胞の暗愚を訓誨し、御身《おんみ》が素志《そし》たる忠君愛国の実を挙げ給え、仮令《たとい》刑期は一年半たりとも減刑の恩典なきにしもあらねば一日も早く出獄すべき方法を講じ、父母の膝下《しっか》にありて孝を尽せかしなど、その後も巡回の折々種々に劬《いたわ》りくれられたれば、遂《つい》には身の軽禁銅たることをも忘れて、ひたすら他の女囚の善導に力を致しぬ。
二 女監の工役
朝も五時に起きて仕度《したく》をなし、女監取締りの監房を開きに来るごとに、他の者と共に静坐して礼義を施し、次いで井戸端《いどばた》に至りて順次顔を洗い、終りて役場《えきじょう》にて食事をなし、それよりいよいよその日の役《えき》につきて、あるいは赤き着物を縫《ぬ》い、あるいは機《はた》を織り糸を紡《つむ》ぐ。先ず着物の定役《ていえき》を記《しる》さんに赤き筒袖の着物は単衣《ひとえもの》ならば三枚、袷《あわせ》ならば
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